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論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
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少し前に公刊された製品差別化の理論分析について紹介します。

Takeshi Ebina, Noriaki Matsushima, and Daisuke Shimizu. 2015. Product differentiation and entry timing in a continuous time spatial competition model, European Journal of Operational Research 247(3), 904-913. 


Hotellingによる線分都市を用いた製品差別化モデルを用いて、市場規模が連続時間で次第に拡大する状況における先発企業と後発企業の製品特性選択と後発企業の参入時点選択について分析しました。これまで分析されてきた線分都市で価格競争を行う理論枠組みでは、生産が一回だけの状況を考えており、企業が価格競争の緩和を狙って製品を最大限差別化することが広く知られています。これに対して、本論文では、連続時間の下、各時点で財の供給が起こる設定に変更しています。線分都市の中心に立地することで、後発企業が参入した後に生じる価格競争を厳しくして複占時における市場の収益性を下げて後発企業の参入を遅らせる誘因があることを示しました。また、Hotellingによる製品差別化モデルでは、消費者が被る移動費用の大きさを表す外生パラメータを製品差別化の程度として捉えますが、このパラメータの値が小さい状況で先発企業の利潤が大きくなりやすいことも示しています。連続時間のモデルに拡張することで、従来の製品差別化モデルにおける結果とは模様の異なる結果を導出したという意味で、一定程度の面白さを有した論文といえると思います。

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昨年、経営戦略の経済分析で定評のある学術誌 Journal of Economics & Management Strategy に公刊された論文を紹介します。

Toshihiro Matsumra and Noriaki Matsushima. 2015. Should Firms Employ Personalized Pricing? Journal of Economics & Management Strategy 24(4), 887-903. 

製品差別化と価格差別(価格戦略)の関係を考慮して、技術投資の誘因について分析しました。英国のTescoをはじめとする欧州における幾つかの大型小売店では、個別消費者ごとの価格差別戦略を採用していて、この実例が研究の動機づけになっています。価格差別戦略を採用するか否か判断する際、営業効率性改善努力(ある種の技術投資)の問題が影響することを明らかにしました。品質や費用の面で優位性を持っている企業が価格差別戦略を採用する傾向にあり、それらの面で劣る企業は競争を緩和するために価格差別戦略を回避する傾向にあることを明らかにしました。これは、英国においてTescoと競合する小売店であるAsdaが価格差別戦略を放棄したことの説明理論として価値がある成果だと思います。
長い間更新していなかったのですが、改めて執筆しなくても情報更新する材料が手元にあることに気が付いたので、赴くままに更新します。

数年前に、Transportation Research Part B: Methodologicalという交通分野で定評のある学術誌に公刊が決まった論文を紹介します。

"Port privatization in an international oligopoly" Noriaki Matsushima and Kazuhiro Takauch, Transportation Research Part B: Methodological. Vol. 67, pp. 382-397.

2012年にJapanese Economic Reviewに掲載された論文における航空輸送の設定を海運輸送に応用し、港湾民営化と港湾業務改善投資の関係について分析しました。市場に二国存在し、各国に立地する企業が自国と他国に財を供給する状況を考えました。各企業が輸出する際、自国と他国の港湾施設を利用する必要があり、その際に港湾利用料を支払います。重工業製品では海運が輸送の主力であり、港湾利用は重要な要因といえます。この設定の下、各国間の輸送環境が改善(輸送費用が低下)することで、港湾の民営化が起こりやすくなることを明らかにしました。また市場規模が小さい国ほど民営化が起こりやすく、民営化された港湾と公営の港湾が共存する市場環境では、民営化された港湾の方が業務改善努力の誘因が強いことも明らかにしました。これらの結果は、関連する実証研究の結果や近年起こっている港湾民営化の流れと整合性があると思います。
長い間更新していなかったのですが、改めて執筆しなくても情報更新する材料が手元にあることに気が付いたので、赴くままに更新します。

数年前に、
Journal of Economic Behavior and Organizationという組織の経済学や行動経済学に関連する研究を中心に掲載する学術誌に公刊が決まった論文を紹介します。

"What factors determine the number of trading partners?" Noriaki Matsushima and Ryusuke Shinohara, Journal of Economic Behavior and Organization. Vol. 106, pp. 428-441.

複数の川下企業と取引可能な川上企業が存在する状況を考え、川上企業による取引範囲決定要因を分析しました。また、この基本設定を拡張して、川上企業による技術投資の誘因と取引範囲との関係を分析しました。その結果、川上企業の平均可変費用が逓減する状況では、狭い取引範囲を設定する方が川上企業にとって望ましい経済環境があることを明らかにしました。また、技術投資の水準についても、狭い取引範囲を設定しているときの方が高くなる可能性があることも明らかにしました。これらの結果は、経営学分野でしばしば指摘されていた、日本のサプライヤーシステムにおいて狭い取引範囲が形成されてきたことの説明理論として価値がある成果だと思います。
しばらく前に、Games and Economic Behavior というゲーム理論関係の雑誌に公刊が決まった論文を紹介します。

"Collusion, agglomeration, and heterogeneity of firms" Toshihiro Matsumura and Noriaki Matsushima, Games and Economic Behavior.

この論文では、Hotelling modelにおける企業集積を議論しています。Hotelling (1929)による古典的な論文で、企業が集積する状況を描写していますが、この設定に企業間の価格競争を導入するとともに、幾つかの仮定を導入して全く異なる結果(企業は可能な限り製品差別化をする)を出した論文としてd'Aspremont et al. (1979)があります。この結果には尤もらしい側面もあるのですが(同じものを作ると、差別化できるものが価格だけになるため、熾烈な競争が起こる。これを回避するために差別化する)、都市という側面でHotelling modelを捉えると、都市集積が起こらない事を示したことになるため、結果に対して違和感を覚える研究者がいたと推測されます。

このd'Aspremont et al. (1979)の結果を『改善』するために幾つかの設定が提示されました。その中で有名な論文として、Jehiel (1992)とFriedman and Thisse (1993)があります。設定は若干異なるのですが、基本の特性は似ています。d'Aspremont et al. (1979)では、企業は製品特性(立地)を選択した後に、価格競争を行うという2段階の手続きを踏む状況を考えていました。この設定を若干変更しています。2段階目に価格競争を行うのではなく、価格設定で結託をする状況を考えています。結託時の利益ですが、この利益は、仮に結託をしなかった時に得られる利益の割合などに依存して決まる状況を考えています(この利益分配ルールが2つの論文で異なっています)。この設定では、競争した時に生じる利益の「割合」が結託利益に影響するため、結託が無かった時の「相対」利益が重要になります。言い換えると、相手よりも相対的に利益が大きい事が、結託時の利益拡大につながるわけです。相手よりも利益が大きい状況を作ることは、相手よりも大きい市場シェアを獲得する事と大凡対応します。これは、Hotelling の価格競争なしの設定と似た状況になっていて、結果として中央での集積という結果が得られるわけです。ここまでの議論で注意すべき事が1つあり、それは暗黙のうちに費用格差が存在しない事を想定していたことです。

今回の論文では、この中央集積は企業に僅かでも費用格差があれば成立しない事を示しています。これが成立する理由は、上記の設定で中央集積した時に起こることが、費用格差がある時と無い時で大きく異なるからです。費用格差が無い場合、競争した場合に両方とも同じ利益になるため利益は半分ずつになります。しかし、費用格差が僅かでもあれば、競争した場合、費用で優っている企業の利益は正(プラス)ですが、劣っている企業はゼロです。同じものを作っているので、安く作れる企業が消費者を総取りするからです。そうすると、利益の割合を計算した時、劣っている企業はゼロです。なので、集積している状況で結託をした場合、劣っている企業は何も取れません。それならば、競争した時の利益が正になるような立地(製品特性)を選択する事になります。この理屈によって、Jehiel (1992)とFriedman and Thisse (1993)によって示された中央集積の結果は、ある一点(費用が完全に対称の場合)でのみ成立するものであることが示されたことになります。
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