忍者ブログ
論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
* admin *
[1]  [2]  [3]  [4
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Journal of Industrial Economicsという産業組織の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。

Vertical mergers and product differentiation

別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って垂直統合と製品差別化の関係を議論しています。材料を作る川上企業と、この材料を使って最終生産物を作る川下企業が存在する市場を考えます。

特殊な投資を要求する場合には垂直統合をする傾向にあり、そうではない場合には垂直分離をする傾向があることは指摘されていますが(機会主義的行動という言葉に代表される議論など)、このような研究では単一の川上企業と川下企業を考えていて、川下企業や川上企業間の競争という側面は殆ど扱われてきませんでした。製品差別化と統合という関係での実証分析はKarl Ulrich and David Ellison (2005, Production and Operations Management)で行われており、特殊なデザインを作る場合には統合をしやすいことを示しています。

企業間競争を盛り込んで統合の誘因を議論するために、製品差別化モデルを用いて上記の問題を扱えるような設定を作りました。その結果として、垂直統合によって製品差別化は促進されることが示されると同時に、統合企業と非統合企業が均衡上で両方存在するような市場環境があることも示され、その時には、非統合川下企業はこの競合相手の垂直統合によって利益が改善する可能性があることも示されました。Foreclosureの文脈では、垂直統合による競合相手の締め出しなどが指摘されていましたが、この設定では、その様な問題が起こらないことが示されたことになるので、Choi and Yi (2001, Rand J. Econ.)などの研究とは異なる視点を提示したことになります。
PR
最近、Marketing Science という雑誌に論文の掲載が決まったので、その論文の概要を書きます。この雑誌のHPに記されているように、査読の手続が速く、この論文は昨年の4月26日に投稿して、9ヶ月経たずに正式の受理になりました(修正は2回(major and minor))。

The existence of low-end firms may help high-end firms (with Ikuo Ishibashi)

この論文では、2種類の製品(ブランド品とノンブランド品)の間で行われる競争を2つのモデルを使って考察しています。この2つのモデルは、経済学や経営現象の経済分析ではお馴染みの設定で、得られた結果は、これらモデル設定の違いには依存していないことも示せています(技術的には、1つは数量競争モデル(Cournot model)で、もう1つは製品差別化の入った価格競争モデルです)。

重要な要素は、2つの消費者群が存在することです。1つはブランド品だけを買い、ノンブランド品には見向きもしない人たちです。もう1つは、製品特性は気にしないで、価格を重視する人たちです。例えば、コカコーラやペプシといった有名な製品には反応するけど、大型量販店が出している独自ブランドの炭酸飲料には反応しない人たちが前者の消費者群に相当し、これら炭酸飲料に対するこだわりが無くて、価格の安いを重視する人たちが後者の消費者群に相当します。この例はマーケティングにおける題材を意識していますが、この様な市場特性は製薬でも存在し、有名会社の作る薬品と俗にいうジェネリック薬品が競合する市場が相応しいと思います。

このような消費者群が存在する時に、ある条件の下では、このようなノンブランド品の参入によってブランド品を作っている企業の利潤が増えることを示しています。通常、競合相手が増えると利潤が減るという直感が成り立ちますが、ここでは、この直感が成り立たない市場構造を明示的に示して、その条件を明確にしたことが重要な貢献になると思います。

これは、製品特性に反応しない消費者というのは、往々にして、価格に敏感であることに起因しています。この様な価格に敏感な消費者が存在する場合、ブランド品を作る企業は、その消費者を意識せざるを得ません。これが値崩れを引き起こしやすくなるわけですが、この値崩れを防ぐ役割を担っているのが、ノンブランド品を作る企業になります。ノンブランド品を作る企業は、ブランドへのこだわりの無い消費者しか相手に出来ないわけですから、この市場が彼らの主戦場になります。ブランド品を作っている企業が、製品へのこだわりの無い消費者群を相手にするためには、価格が勝負になるため、価格が大幅に値崩れします。しかし、既にノンブランド品という競合相手が入っているので、その際に得られる需要は高々知れています。

ノンブランド品が無ければ価値があった大量販売(価格下落)も、ノンブランド品の参入によって、その価値が無くなってしまいます。よって、このようなノンブランド品が入ってくることで、ブランド品を作る会社は高価格を維持するような政策を取らざるを得なくなりますが、これがかえって、ブランド品の値崩れを防ぎ、利益水準を改善する可能性があるわけです。

この結果を踏まえると、既に確立されたブランドを作っている会社は、確立されていない会社が市場に入ったとしても、それに対して、価格という道具を使って対抗するのではなく、自信のブランドを確立するような更なる努力をすべきだと言うことになります。
Annals of Regional Scienceという地域科学の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。

Cost differentials and mixed strategy equilibria in a Hotelling model (with Toshihiro Matsumura)

別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って費用の非対称性と製品差別化の関係を議論しています。既に、Ziss (1993, Regional Science and Urban Economics)でこの問題を扱っていて、費用格差が大きい場合に純粋戦略均衡が存在しないことが知られています。このような状況で均衡を探す場合、混合戦略まで含めて議論する必要があります。そこで、この論文では、混合戦略まで含めた立地問題を考えました。この結果、純粋戦略均衡が存在しないパラメーター領域(費用格差が大きい場合)において、各企業が線分の街の両端に等確率(それぞれ1/2の確率)で立地することが示されます。よって、モデル上では確率1/2で最大差別化が実現して共存が起こり、確率1/2で最小差別化が実現して独占状態になります。この結果を踏まえると、マーケティングでは弱い企業は差別化をしろと強調していますが、弱小企業が差別化に失敗するのは、単に運が悪かったからという可能性は否定できなくなります。また、純粋戦略が存在する場合についても、混合戦略としてどの様なものが出現しうるか分析しています(全ての均衡を網羅しているわけではなく、その点がこの論文の弱点でもあります)。

立地モデルに混合戦略の問題を入れた論文は多くないのですが、幾つか存在します。費用の非対称性が無い状況であれば、Bester et al. (1996, Games and Economic Behavior)で議論していますし、Salop型の立地モデルはIshida and Matsushima (2004, Regional Science and Urban Economics)で議論しています。垂直差別化モデルはWang and Yang (2001, International Journal of Industrial Organization)で議論していますし、また、地域ごとの差別化(spatial discrimination)を考えたモデルはMatsumura and Shimizu (forthcoming, Japanese Economic Review)があります。

この題材は、製品差別化や立地の問題との関連性もあり、マーケティングとの接点もある研究内容だと思いますし、実際、最近になってThomadsen (2007, Marketing Science)でMcDonaldとBurger Kingの立地を調べた論文が出ています。この場合、McDonaldが強い企業でBurger Kingが弱い企業となっていて、強い企業は弱い企業と近い場所に立地して市場を独占しようとするのに対して弱い企業は可能な限り離れようとするということが示されています。これは、Ziss (1993)で示した純粋戦略が存在しない理由と整合的であり、今回紹介した論文とも整合性があると思います。

1. はじめに

小売店舗の立地に関して、しばしば、以下のようなことが言われています。「小売店舗の重要な要素は3つ存在し、1つ目は立地、2つ目は立地、そして3つ目は立地。」この言葉に象徴されるように、立地は小売店舗にとっての最重要項目といえます。実際に、小売店舗は立地に関する工夫を行っていて、街の商店街、郊外に多く見られるショッピングモール、大阪・日本橋の電気街などは、数多くの店舗を集積させることで、消費者の目を自分たちに惹きつける工夫をしています。一方で、このような集積が起こっていると、ここに来た消費者は、この地域内の色んな店にいって商品やその価格を見ることが出来ますから、少しでも安いものを買いやすくなり、これによって、地域内での価格競争が激しくなってしまう心配もあります。以下では、このような問題を扱った店舗立地に関する理論と、この理論を応用した研究について紹介します。

2. Hotellingと最小・最大の差別化原理

[1] 最小の差別化原理 この店舗立地の問題を扱った理論の中で最も重要な貢献の1つとして、Hotelling (1929) による立地モデルがあげられます。以下の図1にあるような、線形の街における店舗立地に関する議論を行い、最小の差別化原理 (principle of minimum differentiation) について指摘したとされています。差別化の意味については、後ほど説明します。

Hotelling (1929) における基本設定を示します。消費者は、この線分上、均等に分布しています。各地点に、それぞれ同じだけの消費者がいるということです。各消費者は、店舗 A か店舗 B の何れかから製品を買います。各店舗は同じものを売っています。商品を買う場合は、店舗まで出かけて行く必要があり、このとき距離に応じた移動費用(距離に関して比例)を被ります。各消費者は、商品を1つだけ買うと仮定します。

rfig1.gif

この設定において、両店舗が設定する価格が、ある同じ水準で固定されている場合(例えば、両店舗ともに1つ100円で売ることを義務付けられている場合)を考えます。この場合、価格が同じなので、消費者の判断基準は距離だけになりますから、各消費者は自分から近い店舗から買うことになります。このような消費者行動を見越すと、結果として、各店舗はこの線分の中央に集積して、顧客を半分ずつ取ります(図2)。この中のある店舗が、この場所から他の場所に移動した時、この移動した店舗の顧客数が減ることを確認してください。これが、Hotelling (1929) における結果の1つである、最小の差別化原理です。

rfig2.gif

このモデルを使って、製品の異質性(差別化の度合い)を表現することがあります。例えば、この線分はカレーの辛さを表現していて、右側は甘口を表し左側は辛口を表すという具合です。甘口カレーが好きな人が辛口カレーを食べるのは、好みと離れているので、その分の不快感(先ほどまでの移動費用)が発生します。各店舗が同じ場所にいるということは、同じような製品を売っている状態と解釈することが出来ます。

Hotelling によるモデルは、今では、ホテリングモデルという言葉まで生まれるほど有名なモデルとして知られていて、最小の差別化原理を示した最初期の理論と言われています。しかし、論文における主要な目的は、価格の安定性に関して数理モデルを用いて議論するところにあります。ベルトラン(人名)をはじめとする、幾つかの理論における価格競争の仕組みとその帰結に対する批判をし、製品が差別化されていれば、価格を少し上昇させても突然顧客がいなくなるというような、極端なことは起こらないことを指摘しています。実際、論文の題目も``Stability in Competition"(競争における安定性)です。この数理モデルについて概観したい場合は、Shy (1995, pp.149-151) や小田切 (2001, pp.130-134) や丸山 (2005, pp.186-190) などが役に立つと思います。

[2] 最大の差別化原理  Hotelling (1929) 以降も多くの論文が書かれていますが、立地戦略と価格戦略の両方を同時に扱った厳密な理論モデルとしては、d'Aspremont et al. (1979) が最も有名だと思います。実は、Hotelling (1929) でも同じような議論は存在するのですが、立地を決定した後に価格を決定するという2段階モデルを考えると、Hotelling (1929) における設定では、立地に関するきれいな結果は得られないことが、d'Aspremont et al. (1979) によって示されています。彼らは、この立地に関する結果が得られない問題に対処するために、消費者の移動費用に関する仮定を変えました。消費者は距離に関して2乗の移動費用 (t x2: t は定数で x は移動距離) を被るとしました。この場合、上述の2段階モデルを考えると、各店舗は線分上の各両端に立地することになります。この立地形態は、最大の差別化原理 (principle of maximal differentiation) として知られています。この立地が実現する理由は、有利な立地を確保して需要を増やすよりも、十分に差別化を行う(互いの距離を離す)ことで、価格競争を緩和する方が有効だからです。仮に同じ場所に立地すると、消費者の判断基準は価格だけになり、1円でも安い方から全員買うことになりますから、熾烈な価格競争が起こります。

[3] 最大の差別化原理に対する不満  d'Aspremont et al. (1979) の論文は、価格競争を考慮した立地戦略に関する議論に対し、1つの明確な結論(製品差別化をする理由と効果)を示したのは事実です。しかし、この最大の差別化原理に対する不満の声も存在しました。特に、一連の立地に関する議論を取りまとめた論文であるBrown (1989) では、秋葉原の電気街やブロードウェイの劇場や映画館など、多くの店舗集積が見られることを例に出して、この結果や設定に対する不備を述べています。Brown (1989) では、この設定をより現実に近づけるためには、不確実性の問題や店舗集積による正の側面を考慮したような理論モデルを構築する必要があることを述べています。後者の問題は、新しい経済地理学 (New Economic Geography) の分野で目覚しい発展を遂げていますが、ここではこの分野に関する紹介は行いません。詳しい議論は、藤田ら(2000) の書籍を参照されるとよいでしょう。以下では、Hotelling (1929) による線分の街を使って、集積の結果を導き出した2つの論文を紹介します。

3. Hotelling modelと企業集積

以下では、前節で示したBrown (1989) の不満に対処している2つの論文を紹介します。各モデルでは、ホテリングモデルを基にした、価格競争も考慮した理論モデルになっています。一見したところ、各モデルはかなり異なっていますが、共通することがあります。中央に集積していても、価格を引き下げる必要の無い状況を、自然な仮定を用いてモデルに組み込み、その下では、中央にいることの利点が大きくなるようにしていることです。以下では、各モデルにおける発想の鋭さを感じていただけたらと思います。

[1] de Palma et al. (1985)  de Palma et al. (1985) では、Hotelling (1929) の設定を基本として、企業の異質性を導入したモデルを構築しています。各地点にいる消費者が、各企業に対して自分なりの好みを見出している状況を考えています。この場合、仮に、各企業が同じ場所に立地していて、一方の企業が高い価格を設定しても、この高価格企業から購入する消費者が存在することになります。各消費者が持っている企業に対する好みに関して、各企業は正確に把握できていませんが、その全体の傾向(好みの散らばり具合)は知っている状況を扱っています。一種の不確実性が導入されている状況といえます。

この状況下では、消費者の企業に対する好みに大きな散らばりが存在する場合(人による好みの差が大きい場合)、各企業は線分上の中心に集積することが示され、設定する価格は正の利潤が出るような水準になることが示されます。Hotelling (1929) では、消費者は各企業の財を同質と判断していたので、前節[2]で述べたように、企業が同じ場所に立地すると、消費者は安い方から買うことになるため、熾烈な価格競争が起こります。一方、de Palma et al. (1985) では、各企業に「お得意様(それが誰で何処に居るか分かっていない)」が存在するために、価格を引き下げて顧客を増やすよりも、自分のことを好いてくれる顧客から利潤を確保する方がよい状況になっています。そして、このお得意様に従事するには、中央に立地するのが最も都合がよいことになります。遠いお得意様に従事するためには、このお得意様の移動費用分だけ価格を下げる必要があるので、この引き下げを避けるには、中央が最適となります。

集積しているけど、各企業は正の利潤を上げているという点で、現実に近づいた理論モデルといえると思います。また、この論文は、Brown (1989) が指摘した拡張すべき方向の基礎になっていると思います。

[2] Bester (1998)   Bester (1998) でも、de Palma et al. (1985) と同じように、企業の異質性を導入したモデルを構築しています。このモデルでは品質に関する異質性を入れています。de Palma et al. (1985) では、よい悪いという要素ではなく好き嫌いという要素(水平的な差異)を各消費者に導入しましたが、Bester (1998) では、各企業の製品に品質の良し悪し(垂直的な差異)が存在する状況を扱っています。また、販売機会が複数回存在し、初回の購入時には、消費者は企業の提示する製品の品質に関する情報を持っていないけど、購入後はその財に関する質を学習する状況を扱っています。この情報の非対称性が、この論文で重要な要素になっています。この場合、品質が判明した後は品質を正しく認識されるので、購入機会が多いほど、高質を作ったときの利益(商品が正当に評価されることにより得られる利益)が高くなります。

消費者が初期時点で質を知らない場合、Klein and Leffler (1981) などによる、非対称情報下の議論にあるように、低価格を設定すると、生産に費用がかかってしまう高品質製品を作った場合に、正の利潤を上げられないことを消費者は見越します。よって、仮に高品質企業が低価格を設定しても、消費者は製品の品質が低いから低価格を設定できると予想します。結果として、高品質企業は、高品質であることを納得してもらうためには、高価格を設定することになり、高品質製品にはある種のプレミアムが発生することになります。この特性が機能して、高品質の製品を作る企業間での競争は緩和されます。仮に同じ場所に立地していたとしても、上述のプレミアムによって生み出される利潤は確保されます。このプレミアム効果が強く働けば、消費者を確保することが重要になりますから、各企業は、Hotelling (1929) における立地を選択することになります。なお、各企業の顧客は、他企業に関する情報は知らないので、他のところに逃げずに、以前買った質が判明している財を買い続けます。

この設定の面白い点は、現実に見られる企業と消費者の間に存在する情報の非対称性が、価格の下げ止まりを約束する装置として機能することを、モデルに組み込んだ点にあると思います。

4. 今後の方向性

既に述べたとおり、このHotelling (1929) による立地モデルを基にした論文は沢山存在し、既にやり尽されたような状態に見えますが、実際は、まだ多くの余地が残されているように思います。1つの方向性としては、今まであまり扱われていなかった、垂直的な関係を考慮した状況を扱う必要があることです。例えば、Matsushima (2004) では、川上企業の製品加工技術が川下企業の製品差別化戦略にどの様な影響を与えるか分析しています。Brekke and Straume (2004) でも、川下企業と川上企業の間での取引を考慮した分析を行っていますが、このような研究は、まだ多くありません。別の方向性としては、Brown (1989) でも指摘されていますが、ゾーニングなどの規制をモデルに取り込んで分析してみることが考えられます。また、立地の議論から離れて、製品差別化の要素を取り込んだ理論モデルを扱う場合には、このHotelling (1929) の設定は非常に多く利用されています。最近でも、Ellison (2005) による``add-on pricing" (車のオプションのような付加設備に対する課金) の議論で用いられています。このような問題を扱う場合は、企業の立地場所は両端にいると仮定されることが多いです。今後も、このHotelling (1929) による立地モデルは、数多くの理論研究で用いられる、有用な道具であり続けると思います。

参考文献

  • Bester, H. (1998) ``Quality uncertainty mitigates product differentiation,” Rand Journal of Economics, 29, 828-844.
  • Brekke, K. R. and O. R. Straume. (2004) ``Bilateral monopolies and location choice,” Regional Science and Urban Economics, 34, 275-288.
  • Brown, S. (1989) ``Retail location theory: the legacy of Harold Hotelling,” Journal of Retailing, 65, 450-470.
  • d'Aspremont, C., J. J. Gabszewicz, and J.-F. Thisse. (1979) ``On Hotelling's `stability in competition',” Econometrica, 47, 1145-1150.
  • de Palma, A., V. Ginsburgh, Y.Y. Papageorgiou, and J.-F. Thisse. (1985) ``The principle of minimum differentiation holds under sufficient heterogeneity,” Econometrica, 53, 767-782.
  • Ellison, G. (2005) ``A model of add-on pricing,” Quarterly Journal of Economics, 120, 585-637.
  • Hotelling, R. (1929) ``Stability in competition,” Economic Journal, 39, 41-57.
  • Klein, B. and K.B. Leffler. (1981) ``The role of market forces in assuring contractual performance,” Journal of Political Economy, 89, 615-641.
  • Matsushima, N. (2004) ``Technology of upstream firm and equilibrium product differentiation,” International Journal of Industrial Organization, 22, 1091-1114.
  • Shy, O., (1995) Industrial organization: Theory and Application, MIT Press, Cambridge.
  • 小田切宏之『新しい産業組織論』 有斐閣, 2001
  • 藤田昌久・P. クルーグマン・A.J. ベナブルズ,・小出 博之 ()『空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析』東洋経済新報社, 2000
  • 丸山雅祥『経営の経済学』 有斐閣, 2005

謝辞

本稿を作成する際に、安部浩次氏から非常に多くの有益な助言をいただいたことに対し、感謝の意を表します。なお、内容の責任は筆者に帰属します。

以前、こんな原稿を某所が出している雑誌に書きました。研究とは直接関係ないのですが、ちょっとした読み物になっていると思うので、転用してみました。

1.
経営学部で経済学を学習する -そば屋さんのカレー?-

経営学部に入った1年目、「市場システム基礎論」という名のミクロ経済学を扱う必須科目が存在することに、驚いた学生さんがいるかもしれません。「数学嫌いなのに、何故、この科目が必須なんだ?」といって、恨んでいる学生さんもいるかもしれません。この科目は、このような数学嫌いの学生をいじめるために設けたのではないと思います(科目設置の経緯は確認していませんが…)。この講義で扱われるミクロ経済学が、経営学で扱う対象を理解する際に、かなりの力を発揮するという考えがあってのことでしょう(これも事実確認をしていないので、真意の程は不明ですが…)。恐らく、そば屋さんで出てくるカレーのような位置付けでも無いと思います。そば屋さんのカレーは意外と美味しいのですが、何となく、脇役(悪くいえばオマケ)といった印象があります。しかし、曲がりなりにも必須科目なので、ミクロ経済学は、経営学におけるオマケでは無いのでしょう。

それでは、ミクロ経済学は、経営学の中でどの様な役割を担っているのでしょうか。以下では、この点を明らかにした後に、私が開講する科目(外国書講読)で扱う内容(ミクロ経済学を応用した分野の1つ、産業組織)の意義を説明します。2節では、経営学に関して簡単に概観し、3節では、ミクロ経済学について簡単に述べ、4節では、産業組織の説明をします。5節で、簡単に外国書の読み方について述べ、6節は、まとめです。


2. 経営学で扱うこと

経営学とは一体何なのか。一体、どの様なことを扱うのか。この点に関しては、上林教授、末廣教授、出井教授(五十音順)がHP上で見解を述べています(下記の経営学研究科HPを参照)。

上林教授: http://www.b.kobe-u.ac.jp/faq/q1/q1-kamba.htm

末廣教授: http://game.b.kobe-u.ac.jp/suehiro/2keieigaku.htm

出井教授: http://www.b.kobe-u.ac.jp/faq/q1/q1-dei.htm

今まで、私は学生として工学部と社会理工学研究科(大学院)に在籍し、教官として経済学部に在籍していましたが、経営学部という組織に属している期間は、まだ1年数ヶ月です。正直なところ、よく分かっていない点が多いのですが、経営学部に属している以上、経営学というものに対して、何らかの考えを持っているべきだと思うので、現時点での、私の見解を述べます。

経営学は、企業や政府や地域の集団など、ある組織の運営について理解して、その理解から何らかの方策などを提案することを目的としていると思います。扱う対象として、ある特定の企業や集団などを設定することが多いことは、経営学の1つの特徴だと思います。

このような組織の運営について考える際、考えるべき問題は沢山あると思います。企業がどの様な方向へ進んで行くべきか(経営戦略)、組織に存在する人々をどの様な形で活用し、そのための組織はどの様にあるべきか(人的資源管理や経営組織)、組織運営に必要な資金をどの様に運用・管理するか(会計学やファイナンス)、組織で作った製品をどの様にして売るべきか(マーケティング)。また、鉄道業や物流業といった、具体的な産業を設定して、その産業における各企業の振る舞いについて考察することもあるでしょう(企業政府関係や交通や物流など)。このような中から、何か着目したい対象を選びますが、その対象によって使う分析手法がかなり異なるのも、経営学の特徴だと思います。

経営学における分析手法は多岐に渡るため、実際に講義を受講する学生の皆さんは、かなり多様な考え方に直面することになり、場合によっては混乱することもあるかもしれませんが、様々な立場を理解する機会が与えられていると、好意的に解釈することも出来ると思います。以下では、このような中で、経済学、特にミクロ経済学がどの様な役割を果たすのか述べてみます。


3. ミクロ経済学と経営学

以下では、ミクロ経済学について簡素な例を用いて説明し、その後で、何故、数理モデルを使うことがあるのか、簡単に私の考えを述べてみます。

3.1 ミクロ経済学と企業活動

ミクロ経済学は、個人や企業など、ある行動主体の意思決定について分析する学問だと思います。特に、ある限られた資源をどの様に割り当てるべきか考えることに焦点が当てられていると思います。

ここで、或る企業を考えます。この企業は、現在販売している主力製品に取って代わるような新製品を開発するための投資を行おうとしています。状況により、企業の選択とその選択理由は様々ですが、以下の2つはしばしば見られるような気がします。

  1. 現在、主力製品の需要が縮小していて今後もこの傾向が続くだろう。そろそろ、何らかの新製品を投入して需要を喚起する必要がある。

  2. 現在、主力製品の需要は縮小しているが、また回復する可能性もある。もう少し状況を見極めてから新製品を投入しても遅くない。

1.の選択では、需要が縮小傾向にあると予想していて、この状況を打破するために新製品を投入すべきと判断し、2.の選択では、需要は縮小傾向にあるわけではないと予想していて、現状では、新製品投入は早いと判断しています。この例では、投資にかかる資金や人材という限られた資源を、どの時点で投入するのが最適なのか考えています。この投資時点に関する意思決定において、需要変動に対する予測は重要な要因の1つだと思います(勿論、ここで挙げた要因だけが、投資の意思決定に影響を与えるわけではありません)。また、需要の不確実性に直面しているので、投資した後に、投資が失敗だったことに気が付くこともあります。しかし、これは、合理的な予測をしても起こりうるということに注意する必要があります(勿論、事後的には「馬鹿だった」と後悔するかもしれません)。

3. 2ミクロ経済学と数理モデル

経済学では、時々、数理モデルを使います。これによって、何かの因果関係を明確に客観性を持った形で表現出来るのが、数理モデルを使う1つの利点だと思います。因果関係が「価格が上がると需要量が減る」といった単純なものであれば、モデルを使う必要は無いと思いますが、この因果関係が幾重にも絡んでくる場合、その11つの関係を明確に設定しないと、それらの関係から出てくる結果が何に依存しているのか、その本質が分かり難くなると思います。

ただ、経済学の基本的な考え方を理解して、普段のちょっとした意思決定に役立てるだけであれば、数理モデルを使う必要性はあまり高くないと思います。実際に、講義で使う事になっている外国書 (Cabral (2000)) も、可能な限り数式を使わない配慮をしています。更に云うと、複雑な因果関係を把握する能力があり、経済学で扱う数理モデルなどを使わなくても本質を理解できる優秀な人はいます。これは、優秀な経営者や経営学者の発言を聞くと理解できると思います。このような能力があれば、ある経営事象を把握する際に、数理モデルなど使う必要は無いでしょう。

このように書くと、実際のところ、数理モデルは必要ないような印象を与えますが、そうは思っていません。私は、前述の優秀な人々が持っているような能力を持ち合わせていない凡人です。しかし、経済学で発展してきた数理モデルを使い、因果関係を捉えることを繰り返すことで、私のような凡人でも、複雑な社会問題を処理する能力が高まると信じていますし、それ故に、日々、黙々と、研究をしているわけです。

3. 3 余談

ある英語教材 (McCarthy and O'Dell (2001)) に、以下の言葉がありました。 ``Economics is the study of money and finance." 間違ってはいませんが、経済学の対象はこれだけではありません。このように考えている人と会い、この人に対して「私は経済学を専門にしている」と話すと、「金儲けのやり方教えて」とった返答や、「どの株が儲かるの」といった返答があります。結論だけ述べると、経済学は金儲けのやり方を研究する学問ではありません(詳しい内容は、芦谷(2005)を参照)。


4. 産業組織と経営学

ミクロ経済学を応用した分野の1つである産業組織(Industrial Organization)を講義(外国書講読)で取り上げる理由を説明し、その後で、これに関連する例を紹介します。

4.1 産業組織を講義で取り上げる理由

産業組織とは一体何を扱う分野なのか。主に、企業の意思決定について分析し、その企業の意思決定が、企業の利潤や消費者にどの様な影響を与えるのか考察する分野です。例として、あるメーカー間の合併を考えます。市場で競合製品を作っているA社とB社がいます。A社の技術とB社の技術を統合すると、新たな技術を生み出すことが可能になると判断し、その実現のために合併を行ったとします。この場合、技術革新が起こり、より良い製品が市場に供給されれば、合併した企業は業績を伸ばし、消費者にも便益をもたらすでしょう。しかし、合併前に、A社とB社が激しい価格競争をしていた場合、この合併によって、価格競争が緩くなってしまうので、価格が上昇する可能性があります。これは、消費者に悪影響をもたらします。この後者の効果が重大だと判断した場合、このような合併を問題視して、何らかの措置(合併の際に何らかの条件を課すなど)が取られることがあります。このように、企業合併という企業行動の効果を分析することは、産業組織で扱うことの1つです。余談ですが、80年代に入ってからは、相互依存関係を分析する道具として有用なゲーム理論を応用して、企業行動の分析をすることが多くなっており、実際に、私もゲーム理論を応用した分析をしています。

この例で展開した考察は、ある組織の運営(企業による合併の意思決定)について理解し、そこから何らかの方策(企業や規制当局などの視点から、合併の是非を判断する指針)を提案しています。これは、2節で述べた、経営学で行うことと対応しています。よって、ミクロ経済学やその応用分野の1つである産業組織は、経営現象を捉える1つの枠組みであり、経営学において、或る程度の役割を担っていると思います。経営学における経済分析の貢献度は、上述のような考察が、企業を含めた社会にとって、どの程度の重要性を持っているかに依存することになるでしょう。

4. 2 携帯電話料金の例

ミクロ経済学やゲーム理論を応用して、経営戦略やマーケティングの講義でも登場する、製品差別化や価格差別といった事柄について考察することがあり、産業組織における重要な研究対象になっています。例えば、携帯電話の料金体系を眺めたとき、基本料金が高いときには単位時間当たり通話料が安いのに対して、基本料金が安い場合に単位時間当たり通話料が高い理由などは、経済学の分析道具を用いると、かなり明快に出てきます(例えば、Maskin and Riley (1984) で説明しています)。以下では、グラフなどを一切使わずに説明しますが、分かり難いかもしれません。詳しい話しが知りたければ、Cabral(2000)10章を自力で読むか、私のところに直接質問しに来てください(研究者や大学院生は、上述の論文を読んでください)。

議論を単純にするために、2種類の消費者が同程度存在すると仮定します。1回の通話から得られる便益が大きく、沢山通話したい人(High typeと呼びます)と、1回の通話から得られる便益が小さく、あまり通話しない人(Low typeと呼びます)が存在すると仮定します。企業は、前述の料金設定によって、High typeの人は高基本料金で低通話料、Low typeの人は低基本料金で高通話料を選択するように誘導します。具体的な数字で表現すると、High typeには、月5000円で使いたい放題のプランを選択するように誘導し、Low typeには、月1500円の基本料で通話120円のプランを選択するように誘導します。

電話を利用する際、提供されるサービスの質が同じであれば、誰でも時間当たり通話料が安い方がよいと考えると思います。ただ、この低通話料から得られる便益の大きさは人によって異なります。今考えている設定では、High typeの方が、低通話料から得られる便益は大きくなっています。この通話料が下がれば下がるほど、この通話サービスを利用する権利に対して支払える金額も増えます。この権利に対する対価を、基本料金という形で消費者から徴収すれば、企業は利潤を得ることが出来ます。よって、企業は、出来るだけ通話料を下げておいて、その分、基本料金を高めに設定しておきます。

ここで問題なのは、Low typeの人が、この高い基本料金を払ってまで通話する権利を欲しがらないことです。あまり通話しないからです。このような消費者からも利益を得るために、通話料金を高めに設定して、それに見合うだけ基本料金を下げた料金体系を用意します。基本料金が低いので、High typeの人がこの料金体系を選択したくなることを危惧するかもしれませんが、それを防ぐために、通話料を高めに設定しています。先ほど述べましたが、High typeの人は、通話からの便益が大きく、沢山通話をします。よって、通話料金が高くなることの損失は、Low typeの人よりも大きくなっているので、通話料を高めにすれば、High typeの人はこの料金体系を好まず、先ほどの心配は回避できます。

ここまでは、通話料と基本料金の関係を述べましたが、パソコンの市場において、各企業が、高機能で高価格の製品と低機能で低価格の製品を同時に販売するのも、電話の料金体系と似ている面があります。高機能の製品を必要とする人は、その性能を十分に活用できる人で、高機能製品から得られる便益も高いでしょうから、高機能の製品に沢山のお金を払えるでしょう。一方で、低機能でもいい人は、文書の作成やメールの送信といった、最低限の作業が出来ればよい人で、高機能でもあまり便益が大きくない人だと思います。

繰り返しになりますが、産業組織では、このような思考法で企業活動を考察し、その活動がどの様な効果を発揮し、社会全体にどの様な影響を与えるのか評価しており、経営学において、一定以上の役割を担っていると思います。


5. 外国書の読み方

担当科目名は外国書講読ですから、外国書の読み方について触れてもよいかもしれませんが、ここでは触れません。それだけの技量を持っていません。外国書を読むときの心構えに関しては、内田(2005)が有益な情報を提供しています。また、外国書講読という講義の意義や、そこでの問題点に関しては、三古(2006)や波田(2006)があります。

私が述べられることは、必要に迫られると、「それなり」に語学習得の努力をするということだけです。私の場合、英語で書かれた論文を読み、英語で論文を書かないと就職できない状況でしたから、それを実行可能にするための努力はしました。ただ、英語で文章を書く際、相手に自分の意図を伝えられれば、その表現の仕方はそれほど問われないので、大袈裟な表現ですが、``This is a pen.’’レベルの文をつなぎ合わせて文章を作っています。恥ずかしいことですが。これが、括弧書きで「それなり」と書いた理由です。


6. まとめ

ここまで、経営学部で経済学を学習する意義について述べてきました。結論だけ述べると、ミクロ経済学やその応用分野の1つである産業組織は、経営現象を捉える1つの枠組みであり、経営学において、或る程度の役割を担っていると思います。

最後になりますが、ある漫画に面白いことが書いてあったので、少しだけ紹介します。山下 (2001)「天才柳沢教授の生活 5(文庫版)」に出てくるY大学経済学部教授、柳沢良則は、経済学を以下のように語っています。私は、この考え方に同意しています。

「経済学とは一種の人間学であると思っています。何故ならば、経済とは複数の人間が交わって初めて成立するものだからです。」(山下(2001, p. 114)

この柳沢教授、この語りの直後に、以下のようなことを語っています。これは、私のような未熟者が気に留めておく必要のある内容だと思っていますし、研究以外にも適用できることだと思います。

「思考能力が如何に優れていても、人間的な血が通わなくては優れた研究は出来ない、と私は信じています。」(山下(2001, p. 114)


参考文献

芦谷政浩, 2005,「経済学で学ばないこと」 国民経済雑誌別冊『経済学・経営学学習のために』平成17年度 前期号, 神戸大学経済経営学会.

内田恭彦, 2005,「外国書講読を楽しく学習するために」 国民経済雑誌別冊『経済学・経営学学習のために』平成17年度 前期号, 神戸大学経済経営学会.

三古展弘, 2006,「外国書講読に期待できそうなこと」 国民経済雑誌別冊『経済学・経営学学習のために』平成18年度 前期号, 神戸大学経済経営学会.

波田芳治, 2006,「英語による参加型の経営専門英語教育を目指して -Reading Foreign Language(外国書講読)」 国民経済雑誌別冊『経済学・経営学学習のために』平成18年度 前期号, 神戸大学経済経営学会.

山下和美, 2001, 『天才柳沢教授の生活 5(文庫版)』, 講談社漫画文庫.

Cabral, L.M.B., 2000, Introduction to Industrial Organization, MIT Press, Cambridge, MA, USA.

Maskin, E. and J. Riley, 1984, “Monopoly with Incomplete Information,” RAND Journal of Economics, 15, 171-196.

McCarthy, M. and F. O'Dell, 2001, Basic vocabulary in use, Cambridge University Press, Cambridge, UK.

BACK NEXT
カレンダー
03 2017/04 05
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
フリーエリア
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
nmatsush
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: 研究紹介 All Rights Reserved