論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
学部教育を行う部局に配置換となったので、再開しました(2025年4月1日)
Journal of Economicsという雑誌に公刊されることになった論文を紹介します。
"Privatization and entries of foreign enterprises in a differentiated industry" Toshihiro Matsumura, Noriaki Matsushima, Ikuo Ishibashi, forthcoming in Journal of Economics.
近年のグローバル化を踏まえ、外国資本が国内市場へ参入した場合の公企業の存在意義について、製品差別化の要素を取り込んで理論的に考察した論文です。ある国内市場に、公企業と国内民間企業と外国民間企業が存在し、各企業が差別化された製品を供給しています。この国の消費者は、価格が安く製品の品種が多いほど嬉しさが増す状況にあります。ここで、以下の2つについて考察しています。1つは、企業数が固定されている場合(短期)、もう1つは、民間企業が内外問わず自由に参入できる場合(長期)です。これら2つを比較し、各状況下での民営化の是非を議論しています。
外国資本が参入した場合の公企業の存在意義について理論的に分析した結果、民間企業が市場へ自由に参入できるか否かで結果が大きく異なることが示されました。参入が無い場合(短期の場合)、民営化で自国の厚生は悪化することが示されました。外国資本の比率が高いときほど、この傾向があることも示されました。一方、自由参入の場合(長期の場合)、短期の結果とは正反対で、外国資本の割合が高いほど民営化が厚生改善につながりやすいことを示しました。
この結果が出てくる理由は以下の通りです。公企業は消費者余剰を考慮するため、低価格にする傾向があります。この価格付けを参入企業は予想しますので、参入が見込まれる場合には、この低価格が民間の参入を抑制し、市場における財の多様性が損なわれます。参入が無ければ、公企業による低価格は消費者利益になり社会厚生を向上させることとは対照的です。この低価格は、外国企業の割合が高い程強く働きます。外国への余剰流出を防ぐために、公企業は低価格により競争を激しくして、外国企業の利益を減らそうとします。
この結果は、社会主義からの移行経済にある場合、公企業の民営化を行い外国資本の導入を積極的に行う方がよいことを示唆していると思います。また、民営化を行う際には、それを単独で行うのではなく、参入制限も緩和(廃止)することを同時に行わないと逆効果になりうることも示唆しています。
"Privatization and entries of foreign enterprises in a differentiated industry" Toshihiro Matsumura, Noriaki Matsushima, Ikuo Ishibashi, forthcoming in Journal of Economics.
近年のグローバル化を踏まえ、外国資本が国内市場へ参入した場合の公企業の存在意義について、製品差別化の要素を取り込んで理論的に考察した論文です。ある国内市場に、公企業と国内民間企業と外国民間企業が存在し、各企業が差別化された製品を供給しています。この国の消費者は、価格が安く製品の品種が多いほど嬉しさが増す状況にあります。ここで、以下の2つについて考察しています。1つは、企業数が固定されている場合(短期)、もう1つは、民間企業が内外問わず自由に参入できる場合(長期)です。これら2つを比較し、各状況下での民営化の是非を議論しています。
外国資本が参入した場合の公企業の存在意義について理論的に分析した結果、民間企業が市場へ自由に参入できるか否かで結果が大きく異なることが示されました。参入が無い場合(短期の場合)、民営化で自国の厚生は悪化することが示されました。外国資本の比率が高いときほど、この傾向があることも示されました。一方、自由参入の場合(長期の場合)、短期の結果とは正反対で、外国資本の割合が高いほど民営化が厚生改善につながりやすいことを示しました。
この結果が出てくる理由は以下の通りです。公企業は消費者余剰を考慮するため、低価格にする傾向があります。この価格付けを参入企業は予想しますので、参入が見込まれる場合には、この低価格が民間の参入を抑制し、市場における財の多様性が損なわれます。参入が無ければ、公企業による低価格は消費者利益になり社会厚生を向上させることとは対照的です。この低価格は、外国企業の割合が高い程強く働きます。外国への余剰流出を防ぐために、公企業は低価格により競争を激しくして、外国企業の利益を減らそうとします。
この結果は、社会主義からの移行経済にある場合、公企業の民営化を行い外国資本の導入を積極的に行う方がよいことを示唆していると思います。また、民営化を行う際には、それを単独で行うのではなく、参入制限も緩和(廃止)することを同時に行わないと逆効果になりうることも示唆しています。
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昨年末に、Journal of Public Economics という雑誌に論文の掲載が決まったので、その論文の概要を書きます。今回は査読手続が速く、投稿から2ヶ月程度で改訂要求が届き、改訂に2ヶ月弱を費やし(全ての時間、これに着手したわけではないけど)、再投稿後1ヶ月半で条件付き受理になりました。色んな意味でうまく事が運んだ論文といえます(ただ、この前に棄却されており、そのレポート内容が全く駄目で困ったのですが)。
Should civil servants be restricted in wage bargaining? A mixed-duopoly approach (with Junichiro Ishida)
この論文では、公務員賃金と民間賃金をある程度釣り合わせる政策の社会厚生へ与える効果を分析するために、公企業と私企業が競争する市場(mixed markets)を想定して分析を行いました。基本の設定はDe Fraja (1993, Oxford Econ. Papers)を借りており、公企業と私企業が1社ずつ存在し、その各企業に人材を供給する労働組合が存在する状況を記述しています。最近の日本では、あまり組合が強くないので、モデル設定と若干の乖離があるのですが、カナダや欧州の多くの国では、このモデル設定のような市場は存在しています。この下で、公企業の労働組合に賃金規制をかけます。公務員賃金は民間のx%とする(xは100以下)、という類の規制です。このような規制がかかると、公務員の組合には不利なようですが、この設定では必ずしもその様にはなりません。ここで扱っているような市場では、公企業は社会厚生の事も考え、市場価格が低下するように沢山の生産を行います(公企業が赤字にならない範囲で)。公務員の賃金が下がることで、この活動を促進する事になりますから、結果として、公企業の生産が伸びて、賃金の下落をカバーするだけの雇用が発生して、公企業の組合には有利に働く可能性を示しました。
Should civil servants be restricted in wage bargaining? A mixed-duopoly approach (with Junichiro Ishida)
この論文では、公務員賃金と民間賃金をある程度釣り合わせる政策の社会厚生へ与える効果を分析するために、公企業と私企業が競争する市場(mixed markets)を想定して分析を行いました。基本の設定はDe Fraja (1993, Oxford Econ. Papers)を借りており、公企業と私企業が1社ずつ存在し、その各企業に人材を供給する労働組合が存在する状況を記述しています。最近の日本では、あまり組合が強くないので、モデル設定と若干の乖離があるのですが、カナダや欧州の多くの国では、このモデル設定のような市場は存在しています。この下で、公企業の労働組合に賃金規制をかけます。公務員賃金は民間のx%とする(xは100以下)、という類の規制です。このような規制がかかると、公務員の組合には不利なようですが、この設定では必ずしもその様にはなりません。ここで扱っているような市場では、公企業は社会厚生の事も考え、市場価格が低下するように沢山の生産を行います(公企業が赤字にならない範囲で)。公務員の賃金が下がることで、この活動を促進する事になりますから、結果として、公企業の生産が伸びて、賃金の下落をカバーするだけの雇用が発生して、公企業の組合には有利に働く可能性を示しました。
Open Economies Reviewという国際経済学の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。
Profit enhancing parallel imports (with Toshihiro Matsumura)
この論文は、ある大学に着任した年に考えて、最初に投稿したのは2002年7月8日でした。その後、投稿戦略を間違えたため、こんなに時間がかかってしまいました。戦略の間違いというよりは、単に、某雑誌に投稿したら2年以上待たされただけなんですが(これが2度起きた)。こういう悲惨な事が起こらないように、もう少し考えて投稿先を選ぼうと思いました。
標準的な発想をすると、価格差別を自由に行える方が企業の利益は増えると思います。例えば、市場が2つ存在する時に、各市場で同じ価格を設定しなくてはいけない、という制約があるよりも、各市場で異なる価格を付けてもよいという状況の方が利益が大きいと予想されます。
この価格付けの自由を制限してしまうものの1つに、並行輸入と呼ばれるものがあります。ある国へ輸出した製品を仲介業者のような第3者が買い取って、それを輸出元の国で販売するものです。この様な行動をする理由は、このある国と輸出元の国の価格を比較した時に、輸出元の国で高い価格が付いているからです。輸出元が先進国で、ある国が途上国の場合、この様な事は起こりえますし、実際に、しばしば、ここで述べた仲介業者が行っていることは観察されます(製薬では非常に問題になっていて、製造原価を考えると途上国で安く売るとが可能であるにもかかわらず、この仲介業の活動が起こるため、製薬会社が途上国での販売を止めてしまい、途上国の人たちが必要とする薬剤が届かないという問題が起こっています)。
ここで問題にしていることは、このような仲介業の活動が、本当に企業利潤を損なうのか否かという点です。実際に、幾つかの研究で、このような活動が元々の製造会社を助ける可能性を指摘しています。
この論文では、途上国市場での競争という観点を導入して分析をしています。その結果、仲介業の活動が製品単価に比べて高い場合には、この様な活動が製造会社を助けることが示されました。この結果は、DVDの価格とRegion Codeの関係と関連があるかもしれません(低価格の製品では、Region Code を取り入れずに仲介業の動きを許容するけど、高価格品では、その活動に制限を与えるためにRegion Code を取り入れている)。
Profit enhancing parallel imports (with Toshihiro Matsumura)
この論文は、ある大学に着任した年に考えて、最初に投稿したのは2002年7月8日でした。その後、投稿戦略を間違えたため、こんなに時間がかかってしまいました。戦略の間違いというよりは、単に、某雑誌に投稿したら2年以上待たされただけなんですが(これが2度起きた)。こういう悲惨な事が起こらないように、もう少し考えて投稿先を選ぼうと思いました。
標準的な発想をすると、価格差別を自由に行える方が企業の利益は増えると思います。例えば、市場が2つ存在する時に、各市場で同じ価格を設定しなくてはいけない、という制約があるよりも、各市場で異なる価格を付けてもよいという状況の方が利益が大きいと予想されます。
この価格付けの自由を制限してしまうものの1つに、並行輸入と呼ばれるものがあります。ある国へ輸出した製品を仲介業者のような第3者が買い取って、それを輸出元の国で販売するものです。この様な行動をする理由は、このある国と輸出元の国の価格を比較した時に、輸出元の国で高い価格が付いているからです。輸出元が先進国で、ある国が途上国の場合、この様な事は起こりえますし、実際に、しばしば、ここで述べた仲介業者が行っていることは観察されます(製薬では非常に問題になっていて、製造原価を考えると途上国で安く売るとが可能であるにもかかわらず、この仲介業の活動が起こるため、製薬会社が途上国での販売を止めてしまい、途上国の人たちが必要とする薬剤が届かないという問題が起こっています)。
ここで問題にしていることは、このような仲介業の活動が、本当に企業利潤を損なうのか否かという点です。実際に、幾つかの研究で、このような活動が元々の製造会社を助ける可能性を指摘しています。
この論文では、途上国市場での競争という観点を導入して分析をしています。その結果、仲介業の活動が製品単価に比べて高い場合には、この様な活動が製造会社を助けることが示されました。この結果は、DVDの価格とRegion Codeの関係と関連があるかもしれません(低価格の製品では、Region Code を取り入れずに仲介業の動きを許容するけど、高価格品では、その活動に制限を与えるためにRegion Code を取り入れている)。
Journal of Industrial Economicsという産業組織の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。
Vertical mergers and product differentiation
別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って垂直統合と製品差別化の関係を議論しています。材料を作る川上企業と、この材料を使って最終生産物を作る川下企業が存在する市場を考えます。
特殊な投資を要求する場合には垂直統合をする傾向にあり、そうではない場合には垂直分離をする傾向があることは指摘されていますが(機会主義的行動という言葉に代表される議論など)、このような研究では単一の川上企業と川下企業を考えていて、川下企業や川上企業間の競争という側面は殆ど扱われてきませんでした。製品差別化と統合という関係での実証分析はKarl Ulrich and David Ellison (2005, Production and Operations Management)で行われており、特殊なデザインを作る場合には統合をしやすいことを示しています。
企業間競争を盛り込んで統合の誘因を議論するために、製品差別化モデルを用いて上記の問題を扱えるような設定を作りました。その結果として、垂直統合によって製品差別化は促進されることが示されると同時に、統合企業と非統合企業が均衡上で両方存在するような市場環境があることも示され、その時には、非統合川下企業はこの競合相手の垂直統合によって利益が改善する可能性があることも示されました。Foreclosureの文脈では、垂直統合による競合相手の締め出しなどが指摘されていましたが、この設定では、その様な問題が起こらないことが示されたことになるので、Choi and Yi (2001, Rand J. Econ.)などの研究とは異なる視点を提示したことになります。
Vertical mergers and product differentiation
別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って垂直統合と製品差別化の関係を議論しています。材料を作る川上企業と、この材料を使って最終生産物を作る川下企業が存在する市場を考えます。
特殊な投資を要求する場合には垂直統合をする傾向にあり、そうではない場合には垂直分離をする傾向があることは指摘されていますが(機会主義的行動という言葉に代表される議論など)、このような研究では単一の川上企業と川下企業を考えていて、川下企業や川上企業間の競争という側面は殆ど扱われてきませんでした。製品差別化と統合という関係での実証分析はKarl Ulrich and David Ellison (2005, Production and Operations Management)で行われており、特殊なデザインを作る場合には統合をしやすいことを示しています。
企業間競争を盛り込んで統合の誘因を議論するために、製品差別化モデルを用いて上記の問題を扱えるような設定を作りました。その結果として、垂直統合によって製品差別化は促進されることが示されると同時に、統合企業と非統合企業が均衡上で両方存在するような市場環境があることも示され、その時には、非統合川下企業はこの競合相手の垂直統合によって利益が改善する可能性があることも示されました。Foreclosureの文脈では、垂直統合による競合相手の締め出しなどが指摘されていましたが、この設定では、その様な問題が起こらないことが示されたことになるので、Choi and Yi (2001, Rand J. Econ.)などの研究とは異なる視点を提示したことになります。
最近、Marketing Science という雑誌に論文の掲載が決まったので、その論文の概要を書きます。この雑誌のHPに記されているように、査読の手続が速く、この論文は昨年の4月26日に投稿して、9ヶ月経たずに正式の受理になりました(修正は2回(major and minor))。
The existence of low-end firms may help high-end firms (with Ikuo Ishibashi)
この論文では、2種類の製品(ブランド品とノンブランド品)の間で行われる競争を2つのモデルを使って考察しています。この2つのモデルは、経済学や経営現象の経済分析ではお馴染みの設定で、得られた結果は、これらモデル設定の違いには依存していないことも示せています(技術的には、1つは数量競争モデル(Cournot model)で、もう1つは製品差別化の入った価格競争モデルです)。
重要な要素は、2つの消費者群が存在することです。1つはブランド品だけを買い、ノンブランド品には見向きもしない人たちです。もう1つは、製品特性は気にしないで、価格を重視する人たちです。例えば、コカコーラやペプシといった有名な製品には反応するけど、大型量販店が出している独自ブランドの炭酸飲料には反応しない人たちが前者の消費者群に相当し、これら炭酸飲料に対するこだわりが無くて、価格の安いを重視する人たちが後者の消費者群に相当します。この例はマーケティングにおける題材を意識していますが、この様な市場特性は製薬でも存在し、有名会社の作る薬品と俗にいうジェネリック薬品が競合する市場が相応しいと思います。
このような消費者群が存在する時に、ある条件の下では、このようなノンブランド品の参入によってブランド品を作っている企業の利潤が増えることを示しています。通常、競合相手が増えると利潤が減るという直感が成り立ちますが、ここでは、この直感が成り立たない市場構造を明示的に示して、その条件を明確にしたことが重要な貢献になると思います。
これは、製品特性に反応しない消費者というのは、往々にして、価格に敏感であることに起因しています。この様な価格に敏感な消費者が存在する場合、ブランド品を作る企業は、その消費者を意識せざるを得ません。これが値崩れを引き起こしやすくなるわけですが、この値崩れを防ぐ役割を担っているのが、ノンブランド品を作る企業になります。ノンブランド品を作る企業は、ブランドへのこだわりの無い消費者しか相手に出来ないわけですから、この市場が彼らの主戦場になります。ブランド品を作っている企業が、製品へのこだわりの無い消費者群を相手にするためには、価格が勝負になるため、価格が大幅に値崩れします。しかし、既にノンブランド品という競合相手が入っているので、その際に得られる需要は高々知れています。
ノンブランド品が無ければ価値があった大量販売(価格下落)も、ノンブランド品の参入によって、その価値が無くなってしまいます。よって、このようなノンブランド品が入ってくることで、ブランド品を作る会社は高価格を維持するような政策を取らざるを得なくなりますが、これがかえって、ブランド品の値崩れを防ぎ、利益水準を改善する可能性があるわけです。
この結果を踏まえると、既に確立されたブランドを作っている会社は、確立されていない会社が市場に入ったとしても、それに対して、価格という道具を使って対抗するのではなく、自信のブランドを確立するような更なる努力をすべきだと言うことになります。
The existence of low-end firms may help high-end firms (with Ikuo Ishibashi)
この論文では、2種類の製品(ブランド品とノンブランド品)の間で行われる競争を2つのモデルを使って考察しています。この2つのモデルは、経済学や経営現象の経済分析ではお馴染みの設定で、得られた結果は、これらモデル設定の違いには依存していないことも示せています(技術的には、1つは数量競争モデル(Cournot model)で、もう1つは製品差別化の入った価格競争モデルです)。
重要な要素は、2つの消費者群が存在することです。1つはブランド品だけを買い、ノンブランド品には見向きもしない人たちです。もう1つは、製品特性は気にしないで、価格を重視する人たちです。例えば、コカコーラやペプシといった有名な製品には反応するけど、大型量販店が出している独自ブランドの炭酸飲料には反応しない人たちが前者の消費者群に相当し、これら炭酸飲料に対するこだわりが無くて、価格の安いを重視する人たちが後者の消費者群に相当します。この例はマーケティングにおける題材を意識していますが、この様な市場特性は製薬でも存在し、有名会社の作る薬品と俗にいうジェネリック薬品が競合する市場が相応しいと思います。
このような消費者群が存在する時に、ある条件の下では、このようなノンブランド品の参入によってブランド品を作っている企業の利潤が増えることを示しています。通常、競合相手が増えると利潤が減るという直感が成り立ちますが、ここでは、この直感が成り立たない市場構造を明示的に示して、その条件を明確にしたことが重要な貢献になると思います。
これは、製品特性に反応しない消費者というのは、往々にして、価格に敏感であることに起因しています。この様な価格に敏感な消費者が存在する場合、ブランド品を作る企業は、その消費者を意識せざるを得ません。これが値崩れを引き起こしやすくなるわけですが、この値崩れを防ぐ役割を担っているのが、ノンブランド品を作る企業になります。ノンブランド品を作る企業は、ブランドへのこだわりの無い消費者しか相手に出来ないわけですから、この市場が彼らの主戦場になります。ブランド品を作っている企業が、製品へのこだわりの無い消費者群を相手にするためには、価格が勝負になるため、価格が大幅に値崩れします。しかし、既にノンブランド品という競合相手が入っているので、その際に得られる需要は高々知れています。
ノンブランド品が無ければ価値があった大量販売(価格下落)も、ノンブランド品の参入によって、その価値が無くなってしまいます。よって、このようなノンブランド品が入ってくることで、ブランド品を作る会社は高価格を維持するような政策を取らざるを得なくなりますが、これがかえって、ブランド品の値崩れを防ぎ、利益水準を改善する可能性があるわけです。
この結果を踏まえると、既に確立されたブランドを作っている会社は、確立されていない会社が市場に入ったとしても、それに対して、価格という道具を使って対抗するのではなく、自信のブランドを確立するような更なる努力をすべきだと言うことになります。

