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論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
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Journal of Industrial Economicsという産業組織の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。

Vertical mergers and product differentiation

別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って垂直統合と製品差別化の関係を議論しています。材料を作る川上企業と、この材料を使って最終生産物を作る川下企業が存在する市場を考えます。

特殊な投資を要求する場合には垂直統合をする傾向にあり、そうではない場合には垂直分離をする傾向があることは指摘されていますが(機会主義的行動という言葉に代表される議論など)、このような研究では単一の川上企業と川下企業を考えていて、川下企業や川上企業間の競争という側面は殆ど扱われてきませんでした。製品差別化と統合という関係での実証分析はKarl Ulrich and David Ellison (2005, Production and Operations Management)で行われており、特殊なデザインを作る場合には統合をしやすいことを示しています。

企業間競争を盛り込んで統合の誘因を議論するために、製品差別化モデルを用いて上記の問題を扱えるような設定を作りました。その結果として、垂直統合によって製品差別化は促進されることが示されると同時に、統合企業と非統合企業が均衡上で両方存在するような市場環境があることも示され、その時には、非統合川下企業はこの競合相手の垂直統合によって利益が改善する可能性があることも示されました。Foreclosureの文脈では、垂直統合による競合相手の締め出しなどが指摘されていましたが、この設定では、その様な問題が起こらないことが示されたことになるので、Choi and Yi (2001, Rand J. Econ.)などの研究とは異なる視点を提示したことになります。
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最近、Marketing Science という雑誌に論文の掲載が決まったので、その論文の概要を書きます。この雑誌のHPに記されているように、査読の手続が速く、この論文は昨年の4月26日に投稿して、9ヶ月経たずに正式の受理になりました(修正は2回(major and minor))。

The existence of low-end firms may help high-end firms (with Ikuo Ishibashi)

この論文では、2種類の製品(ブランド品とノンブランド品)の間で行われる競争を2つのモデルを使って考察しています。この2つのモデルは、経済学や経営現象の経済分析ではお馴染みの設定で、得られた結果は、これらモデル設定の違いには依存していないことも示せています(技術的には、1つは数量競争モデル(Cournot model)で、もう1つは製品差別化の入った価格競争モデルです)。

重要な要素は、2つの消費者群が存在することです。1つはブランド品だけを買い、ノンブランド品には見向きもしない人たちです。もう1つは、製品特性は気にしないで、価格を重視する人たちです。例えば、コカコーラやペプシといった有名な製品には反応するけど、大型量販店が出している独自ブランドの炭酸飲料には反応しない人たちが前者の消費者群に相当し、これら炭酸飲料に対するこだわりが無くて、価格の安いを重視する人たちが後者の消費者群に相当します。この例はマーケティングにおける題材を意識していますが、この様な市場特性は製薬でも存在し、有名会社の作る薬品と俗にいうジェネリック薬品が競合する市場が相応しいと思います。

このような消費者群が存在する時に、ある条件の下では、このようなノンブランド品の参入によってブランド品を作っている企業の利潤が増えることを示しています。通常、競合相手が増えると利潤が減るという直感が成り立ちますが、ここでは、この直感が成り立たない市場構造を明示的に示して、その条件を明確にしたことが重要な貢献になると思います。

これは、製品特性に反応しない消費者というのは、往々にして、価格に敏感であることに起因しています。この様な価格に敏感な消費者が存在する場合、ブランド品を作る企業は、その消費者を意識せざるを得ません。これが値崩れを引き起こしやすくなるわけですが、この値崩れを防ぐ役割を担っているのが、ノンブランド品を作る企業になります。ノンブランド品を作る企業は、ブランドへのこだわりの無い消費者しか相手に出来ないわけですから、この市場が彼らの主戦場になります。ブランド品を作っている企業が、製品へのこだわりの無い消費者群を相手にするためには、価格が勝負になるため、価格が大幅に値崩れします。しかし、既にノンブランド品という競合相手が入っているので、その際に得られる需要は高々知れています。

ノンブランド品が無ければ価値があった大量販売(価格下落)も、ノンブランド品の参入によって、その価値が無くなってしまいます。よって、このようなノンブランド品が入ってくることで、ブランド品を作る会社は高価格を維持するような政策を取らざるを得なくなりますが、これがかえって、ブランド品の値崩れを防ぎ、利益水準を改善する可能性があるわけです。

この結果を踏まえると、既に確立されたブランドを作っている会社は、確立されていない会社が市場に入ったとしても、それに対して、価格という道具を使って対抗するのではなく、自信のブランドを確立するような更なる努力をすべきだと言うことになります。
Annals of Regional Scienceという地域科学の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。

Cost differentials and mixed strategy equilibria in a Hotelling model (with Toshihiro Matsumura)

別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って費用の非対称性と製品差別化の関係を議論しています。既に、Ziss (1993, Regional Science and Urban Economics)でこの問題を扱っていて、費用格差が大きい場合に純粋戦略均衡が存在しないことが知られています。このような状況で均衡を探す場合、混合戦略まで含めて議論する必要があります。そこで、この論文では、混合戦略まで含めた立地問題を考えました。この結果、純粋戦略均衡が存在しないパラメーター領域(費用格差が大きい場合)において、各企業が線分の街の両端に等確率(それぞれ1/2の確率)で立地することが示されます。よって、モデル上では確率1/2で最大差別化が実現して共存が起こり、確率1/2で最小差別化が実現して独占状態になります。この結果を踏まえると、マーケティングでは弱い企業は差別化をしろと強調していますが、弱小企業が差別化に失敗するのは、単に運が悪かったからという可能性は否定できなくなります。また、純粋戦略が存在する場合についても、混合戦略としてどの様なものが出現しうるか分析しています(全ての均衡を網羅しているわけではなく、その点がこの論文の弱点でもあります)。

立地モデルに混合戦略の問題を入れた論文は多くないのですが、幾つか存在します。費用の非対称性が無い状況であれば、Bester et al. (1996, Games and Economic Behavior)で議論していますし、Salop型の立地モデルはIshida and Matsushima (2004, Regional Science and Urban Economics)で議論しています。垂直差別化モデルはWang and Yang (2001, International Journal of Industrial Organization)で議論していますし、また、地域ごとの差別化(spatial discrimination)を考えたモデルはMatsumura and Shimizu (forthcoming, Japanese Economic Review)があります。

この題材は、製品差別化や立地の問題との関連性もあり、マーケティングとの接点もある研究内容だと思いますし、実際、最近になってThomadsen (2007, Marketing Science)でMcDonaldとBurger Kingの立地を調べた論文が出ています。この場合、McDonaldが強い企業でBurger Kingが弱い企業となっていて、強い企業は弱い企業と近い場所に立地して市場を独占しようとするのに対して弱い企業は可能な限り離れようとするということが示されています。これは、Ziss (1993)で示した純粋戦略が存在しない理由と整合的であり、今回紹介した論文とも整合性があると思います。
気が向いたときに、研究に関することを書くかもしれません。淡々とした日常記録とは別に、研究内容の紹介文を書くかもしれません。

「かもしれません」という言葉が強調されていますが、生産性が高くないため、出てくる研究成果の数が少なく、時々しか更新できないことが分かっているからです。ヨロヨロしながらも、共著者に助けられながら生きている様を、淡々と記録できたらと思っています。私の場合、共著者が居なかったら、早い段階で死んでいる感じです。この場を借りて、感謝の意を表したいと思います。

こんな人でも生きて行けることを知ってもらえば、後ろに控えている優秀な人が参入する気になってくれると思っています。「こいつ(私)でも出来るのであれば、自分に出来ないわけがない!」と思う闘志溢れる人が参入してくれれば、分野が活性化して、学術発展に寄与すると考えています。

とりあえず、前口上を記述しました。
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