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論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
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最近、Marketing Science という雑誌に論文の掲載が決まったので、その論文の概要を書きます。この雑誌のHPに記されているように、査読の手続が速く、この論文は昨年の4月26日に投稿して、9ヶ月経たずに正式の受理になりました(修正は2回(major and minor))。

The existence of low-end firms may help high-end firms (with Ikuo Ishibashi)

この論文では、2種類の製品(ブランド品とノンブランド品)の間で行われる競争を2つのモデルを使って考察しています。この2つのモデルは、経済学や経営現象の経済分析ではお馴染みの設定で、得られた結果は、これらモデル設定の違いには依存していないことも示せています(技術的には、1つは数量競争モデル(Cournot model)で、もう1つは製品差別化の入った価格競争モデルです)。

重要な要素は、2つの消費者群が存在することです。1つはブランド品だけを買い、ノンブランド品には見向きもしない人たちです。もう1つは、製品特性は気にしないで、価格を重視する人たちです。例えば、コカコーラやペプシといった有名な製品には反応するけど、大型量販店が出している独自ブランドの炭酸飲料には反応しない人たちが前者の消費者群に相当し、これら炭酸飲料に対するこだわりが無くて、価格の安いを重視する人たちが後者の消費者群に相当します。この例はマーケティングにおける題材を意識していますが、この様な市場特性は製薬でも存在し、有名会社の作る薬品と俗にいうジェネリック薬品が競合する市場が相応しいと思います。

このような消費者群が存在する時に、ある条件の下では、このようなノンブランド品の参入によってブランド品を作っている企業の利潤が増えることを示しています。通常、競合相手が増えると利潤が減るという直感が成り立ちますが、ここでは、この直感が成り立たない市場構造を明示的に示して、その条件を明確にしたことが重要な貢献になると思います。

これは、製品特性に反応しない消費者というのは、往々にして、価格に敏感であることに起因しています。この様な価格に敏感な消費者が存在する場合、ブランド品を作る企業は、その消費者を意識せざるを得ません。これが値崩れを引き起こしやすくなるわけですが、この値崩れを防ぐ役割を担っているのが、ノンブランド品を作る企業になります。ノンブランド品を作る企業は、ブランドへのこだわりの無い消費者しか相手に出来ないわけですから、この市場が彼らの主戦場になります。ブランド品を作っている企業が、製品へのこだわりの無い消費者群を相手にするためには、価格が勝負になるため、価格が大幅に値崩れします。しかし、既にノンブランド品という競合相手が入っているので、その際に得られる需要は高々知れています。

ノンブランド品が無ければ価値があった大量販売(価格下落)も、ノンブランド品の参入によって、その価値が無くなってしまいます。よって、このようなノンブランド品が入ってくることで、ブランド品を作る会社は高価格を維持するような政策を取らざるを得なくなりますが、これがかえって、ブランド品の値崩れを防ぎ、利益水準を改善する可能性があるわけです。

この結果を踏まえると、既に確立されたブランドを作っている会社は、確立されていない会社が市場に入ったとしても、それに対して、価格という道具を使って対抗するのではなく、自信のブランドを確立するような更なる努力をすべきだと言うことになります。
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