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論文が査読誌への公刊が決まるごとに、日本語で紹介文を書きます。
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Annals of Regional Scienceという地域科学の雑誌に出ることになっている論文を紹介します。

Cost differentials and mixed strategy equilibria in a Hotelling model (with Toshihiro Matsumura)

別のページで紹介しているように、製品差別化を表現するために線分の街を使うことがありますが、この論文では、d’Aspremont, Gabszewicz, and Thisse (1979, Econometrica)による製品差別化モデルを使って費用の非対称性と製品差別化の関係を議論しています。既に、Ziss (1993, Regional Science and Urban Economics)でこの問題を扱っていて、費用格差が大きい場合に純粋戦略均衡が存在しないことが知られています。このような状況で均衡を探す場合、混合戦略まで含めて議論する必要があります。そこで、この論文では、混合戦略まで含めた立地問題を考えました。この結果、純粋戦略均衡が存在しないパラメーター領域(費用格差が大きい場合)において、各企業が線分の街の両端に等確率(それぞれ1/2の確率)で立地することが示されます。よって、モデル上では確率1/2で最大差別化が実現して共存が起こり、確率1/2で最小差別化が実現して独占状態になります。この結果を踏まえると、マーケティングでは弱い企業は差別化をしろと強調していますが、弱小企業が差別化に失敗するのは、単に運が悪かったからという可能性は否定できなくなります。また、純粋戦略が存在する場合についても、混合戦略としてどの様なものが出現しうるか分析しています(全ての均衡を網羅しているわけではなく、その点がこの論文の弱点でもあります)。

立地モデルに混合戦略の問題を入れた論文は多くないのですが、幾つか存在します。費用の非対称性が無い状況であれば、Bester et al. (1996, Games and Economic Behavior)で議論していますし、Salop型の立地モデルはIshida and Matsushima (2004, Regional Science and Urban Economics)で議論しています。垂直差別化モデルはWang and Yang (2001, International Journal of Industrial Organization)で議論していますし、また、地域ごとの差別化(spatial discrimination)を考えたモデルはMatsumura and Shimizu (forthcoming, Japanese Economic Review)があります。

この題材は、製品差別化や立地の問題との関連性もあり、マーケティングとの接点もある研究内容だと思いますし、実際、最近になってThomadsen (2007, Marketing Science)でMcDonaldとBurger Kingの立地を調べた論文が出ています。この場合、McDonaldが強い企業でBurger Kingが弱い企業となっていて、強い企業は弱い企業と近い場所に立地して市場を独占しようとするのに対して弱い企業は可能な限り離れようとするということが示されています。これは、Ziss (1993)で示した純粋戦略が存在しない理由と整合的であり、今回紹介した論文とも整合性があると思います。
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